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sXGP ~ローカル5Gだけではない、プライベートLTEの取り組み~

はじめに

2021年現在、バズワードとなっているローカル5Gですが、その裏でひっそり(?)とプライベートLTEなるものが存在しています。

この回ではプライベートLTEについて、当社の取り組みをご紹介します。

プライベートLTEとは

読んで字のごとく、プライベート(閉域)で利用可能なLTE技術を指します。

一般的にLTEとはMNOやMVNO、BWA事業者が提供するサービスでのみ使用できるものでしたが、利用者自身がLTEのネットワークを構築、運用することが可能です。

以下はWi-Fiと比較した際の主な利点です。

  • 電波干渉が少ない
  • ハンドオーバーがスムーズ
  • セキュア(SIM認証による高い耐タンパ性)

自営BWAとsXGP

プライベートLTEは大別すると2つの方式があります。

sXGP自営BWA
周波数1.9GHz帯2.5GHz帯
無線局免許不要必要
利用シーン屋内中心屋外中心
下りスループット約12Mbps約200Mbps
制限5MHz * 3chの内、1つのchは構内PHSと干渉する地域BWAが優先されるため利用できない場合がある

当社は主に、免許不要で手軽に構築することが可能なsXGP方式を扱っております。

ネットワーク構成

以下がsXGPの基本構成です。

特に注意すべき点が3つあります。

  • アクセスポイントとEPCの相性
  • 端末とアクセスポイントの技適取得有無
  • 基地局の時刻同期

まずアクセスポイントとEPCの相性について。モバイル通信は各装置が連携して端末の状態をステートフルに保持することが特徴です。その際に使用するパラメータが非常に多く、メーカーによって実装が異なる場合があります。組み合わせて動作確認することをIOT(InterOperability Test)と言いますが、基本的にはメーカー/ベンダーが行います。IOTが完了している組み合わせで構築するのが確実です。勿論、オープンソースのEPC等でチャレンジすることも可能です。

※NextEPC(https://nextepc.org/)など

技適について、sXGPで使用する周波数(B39)は多くの端末で対応していますが、デジタルコードレス電話に分類されるため、技適を別途取得する必要があります。

以下のサイトで調べることが可能ですので、使いたい機器が対応しているか確認することをお勧めします。

次に時刻同期ですが、sXGPに限らずプライベートLTEは時分割の通信方式を採用しており、μ秒単位で正確に時刻同期しなければなりません。GNSS信号を用いる方法と、MNOの基地局を用いる方法(NL: Network Listening)があり、前者が一般的ですが、安定して信号を受信できるよう、GNSSアンテナを設置する必要がある他、専用の時刻配信プロトコル(PTP)に対応した機器でネットワークを構成しなければなりません。

(ぶっちゃけ)まだ流行っていない理由

特に大きな課題として以下の2点が挙げられます。

  • 対応機器が少ない
  • 技術者が不足している

前者は端末の技適が無いために使用できないケースが多く、取得するには費用が発生します。場合によってはファームウェアの追加開発など製品のカスタマイズが必要になる場合もあり、個別対応を求められるメーカーと、小ロットでの提供を求めるユーザの間でニワトリとタマゴの状態に陥りやすいです。

後者は間接的な影響です。そもそもこれまでLTE技術はMNOのものであり、ユーザ企業はおろかITベンダでも技術者が非常に少なく、当然ながらエンジニア単価も高くなりがちです。構築だけならまだしも、運用までITベンダに丸投げしなければならない場合、複数年でトータルコストを試算すると情シス予算に収まりきらないことが多いです。

流行る(かもしれない)理由

上述したように、(まだ)流行っていないにも関わらず当社がsXGPに取り組んでいる理由を説明いたします。

  • 制度改正による更なる高度化への期待
  • SaaS型のプラットフォーム普及

過去、sXGPを検討した経験のある方はご存知かと思いますが、もともとsXGPで使用可能な周波数は1chのみでした。それも構内PHSと干渉するという大きな課題を抱えており、例外なくほぼ全ての導入検討が検証/PoCから先に進まない状況でした。

しかし、2020年12月の制度改正により周波数帯が拡張され、構内PHSとの干渉という、致命的な課題は解消されました。

令和2年総務省告示第374号~381号

加えて、5MHz幅から10MHz幅への拡張や5G NR化といった更なる高度化が検討課題に挙がっており、ユースケースの拡大に伴うメーカーの参入増加が期待されます。

また、ローカル5Gにおいて注目されているSaaS型のプラットフォームが副産物的にプライベートLTEへ広がる可能性があります。Working Group 2社のサービスが代表的な例であり、このようなサービスを活用することで専門的な知識を持たずとも安価にシステムの導入が可能となります。

まとめ

まだ制度が途上段階であり、バズっているローカル5Gの影に隠れがちですが、免許不要で手軽に始めることができること、今も少しずつユースケースが拡大していること、5Gと比較して「枯れた」技術を使う信頼性の高い方式であることから、ユースケースによってはsXGPはローカル5Gよりも合理的な選択肢になり得る場合があると考えております。

当社はお客様からの要望を伺いながら、様々なメーカー、パートナーと連携して導入ハードルを下げる努力を続けてまいります。ご興味のある方は気軽にお問合せください。

参考資料

総務省 デジタルコードレス電話作業班
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/idou/digital_codeless.html

XGPフォーラム
https://www.xgpforum.com/new_XGP/ja/topics/sXGP/sXGP.html