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今さら聞けないMVNO ~1. MVNOに必要なモノ・コト~

「格安SIM」という言葉が一般的なものとなってしばらく経ち、世間に広く認知されているMVNOですが、どのような技術が用いられているのか、その仕組みはあまり知られていないと思います。

当社は10年以上もの間、様々な形でMVNOを支援してきました。
これまでの経験に基づいて、シリーズで以下をご紹介します。

1. そもそもMVNOって何?
 MVNOのネットワークで使う技術や、導入~運用に必要な工程
2. 事業化するにあたってどのような費用が発生するのか (coming soon)
3. MVNOの今後の展望 (coming soon)

そもそもMVNOって何?

まず初めに、MVNOとはどういったものなのかご紹介します。

MVNOとは

「Mobile Virtual Network Operator」で、日本語にすると「仮想移動体通信事業者」となります。基地局を持たず「仮想的に」にモバイルサービスを提供するのがMVNOです。基地局を持つ携帯キャリア(MNO:Mobile Network Operator)のネットワークを間借りして通信サービスを提供しています。

MVNOの種類

MVNOには大きく分けて2種類のタイプがあります。

・ライトMVNO
 ┗SIM再販
   設備を持たずに他のMVNOやMNOからSIMを調達して再販
   (特徴)初期投資が少ない, 実現できるサービス内容が調達先のMVNO/MNOに依存する
 ┗レイヤ2接続
  ┗MNOとの接続
    MNOの交換機(S-GW)と自社設備を接続
    (特徴)設備投資が必要, MNOや各所との協議・調整に時間を要する, サービス内容を柔軟に設計可能
  ┗MVNEからの帯域卸
    既にMNOと接続しているMVNO(MVNE)を介して自社設備を接続
    (特徴)設備投資が必要, MNOとの協議が不要, 接続を中継するMVNOのマージンが発生, サービス内容を柔軟に設計可能

MVNEとは?・・・「E」はEnablerのことで、MVNOを支援する事業者です。SIM再販や帯域卸のサービスを提供している事業者を指すことが多いですが、設備の構築など事業運営全般を支援する当社もMVNEの定義に含まれます。

・フルMVNO
 レイヤ2接続設備に加えてHSSを保有し、独自SIMを提供
 (特徴)大規模な設備投資が必要, SIMのコントロール(在庫管理など)が柔軟に可能, 将来的にMNOと同等かそれ以上のサービス実現可能性がある(音声通話サービス、エッジコンピューティング、ローカル5GやプライベートLTEとの連携 など)

この記事では主に「レイヤ2接続」のMVNOを中心に紹介していきます。

MVNOのネットワークで使う技術

MVNOのネットワークで使う技術は大きく以下の4つに分類されます。
[1] モバイルコア
[2] インターネット接続
[3] ユーザ認証/リアルタイム課金
[4] 監視/運用
それぞれ見ていきましょう。

[1] モバイルコア

MNOのネットワークと接続して、端末とデータの送受信を行うためにはパケット交換機が必要です。この交換機には色々な種類があり、総称してEPCと呼ばれています。
MVNOにはP-GWという交換機が必要です。端末がインターネット接続するためのプロトコル変換※を行います。
※GTPというモバイル特有のプロトコルとIPの変換を行います。

[2] インターネット接続

自宅等のインターネット回線と同様に、当然ながらMVNOのネットワークもインターネットに接続する必要があります。CGNやDNSといった機能、TransitやIXとの接続が必要になります。インターネット接続用の回線は、グローバルASやグローバルIPの割り当てを受けずに上位のTransit事業者から卸提供を受けることも可能です。

[3] ユーザ認証/リアルタイム課金

スマホでAPNやユーザ名、パスワードといった設定項目を見たことがあるかもしれませんが、これらはMVNOのネットワーク内でユーザを認証するために必要です。設定された内容が加入しているプラン情報と一致しているか確認します。通常はRADIUSプロトコルが用いられます。

「ギガ」の消費状況をリアルタイムに把握する仕組みも必要です。これはPCRF/OCSといったモバイル特有の装置で実現します。通常はDiameterプロトコルが用いられます。加入者情報のデータベースやマイページ等と連携して課金情報を管理する非常に重要な装置です。

[4] 監視/運用

MVNOは電気通信事業として国に届出が必要です。故障等でサービス品質が低下した際の報告基準が設けられており、安心・安定したサービスの維持が強く求められます。装置が正常に稼働していることは勿論ですが、ユーザ目線で見たときの通信品質が保たれていることが重要です。ネットワークの監視は古くからSNMPやSYSLOGといった機能で定点観測することが通常ですが、最近ではこれらに加えてユーザ体感の可視化・分析を行うダッシュボード等、エンドツーエンドで品質監視ができるような仕組みを構築することが多いです。

導入~運用に必要な工程

最後に、MVNOを始めるにはどのような工程が発生するのか簡単に紹介します。

  1. サービス内容やターゲットの設定
  2. 実現に係る費用の算出 ※この記事では取り上げていませんが、物流や顧客管理、コールセンター等の検討も必要です
  3. MNO/MVNEへの相談
  4. 事業計画の策定
  5. MNO/MVNEとの契約
  6. 機材の発注、業務委託先企業との契約
  7. 機材搬入・システム構築
  8. フィールドテスト
  9. サービス運用体制構築
  10. サービス開始

重要なのは1.~5.の工程です。サービス内容やターゲットが漠然とした状態で構築に入ってしまうと、過剰な設備投資になってしまったり、重要な機能が抜け落ちてしまったりします。発注後に「こんなはずではなかった」とならないよう、計画段階から専任チームの組成や業務委託の検討をお勧めしています。

10年以上に渡って積み上げてきた実績に基づいてご支援いたしますので、MVNO事業についてのお悩みは当社までご相談ください。

次回からはどのような費用が発生するのかご紹介します。