今回はMVNOの事業化にどのような費用が発生するのか、前回に続きレイヤ2接続の場合を想定し、大きな費用が必要となる①MVNO事業で利用する外部サービス、②MVNO事業に必要なものと販売形態、についてシリーズを2回に分けてご紹介します。
“今さら聞けないMVNO”シリーズ記事一覧はコチラ
- MVNOに必要なモノ・コト
- MVNO事業で発生する費用①
- MVNO事業で発生する費用② (Coming soon…)
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必要な費用
レイヤ2接続のMVNO事業化には大きく分けて以下のような費用が発生します。
業務委託 | ‧プロジェクト管理(事業計画の策定、MNO/MVNE等との対外調整、スケジュール管理等) ‧システム開発 ‧システム運用 ‧物流管理、コールセンター等の定型業務 など |
機器購入 | ‧サーバやソフトウェア等の製品購入 ‧ユーザへ販売する端末等の仕入れ など |
サービス利用 | ‧データセンタ設備や専用線使用料 ‧MNO/MVNEの設備使用料 ‧Transit/IX事業者の設備使用料 など |
その他販管費 | ‧人件費 ‧広告宣伝費 など |
本記事(MVNO事業で発生する費用①、②)ではあまり触れませんがケースバイケースで業務委託や販管費が必要になります。前回記事でも説明した通り初めの計画が肝心ですので専任チームを初めから組成することをお勧めします。
MVNOに限らず通信事業には様々な作法があるため、それらを理解しているパートナーとともに検討を進めることをお勧めします 。
MVNO事業で利用する外部のサービス
MVNO事業をする上では以下のように様々な外部サービスを利用する必要があります。
サーバを設置するデータセンタが必要です。MNO/MVNEとの接続には一般的に専用線を用いるため、立地にも気を付けなければなりません。基本的には接続相手とできるだけ近い距離にあるデータセンタを選ぶことをお勧めしています。インターネット接続回線も必要ですが、データセンタによっては構内配線で様々なISPと接続できたりします。接続コストを大きく削減できる場合があるため、この点も選定ポイントとして重要です。サーバラックの数に応じて月額費用が発生することが一般的です。
前述の通りMNO/MVNEとの接続には一般的に専用線を用います。終端装置の購入‧設置やデータセンタへの回線引き込み手配、光ファイバそのもの(ダークファイバなど)の手配が必要です。データセンタによってはこれらをマネージドサービスとして一括で提供している場合もあり、距離や芯数(光ファイバ本数)などに応じて月額費用が発生することが一般的です。
MNO/MVNEの設備を使用するための料金が発生します。通信帯域に応じた月額費用や設備自体の固定費、SIMカードの発行費用などが挙げられます。MNOの費用は各社がWeb上で参考情報を公開しています。「MNO名 MVNOに関する情報」で検索できます。
インターネット接続は通信帯域の使用量に応じて従量的に発生する費用(Transitサービス…①)と、接続装置の物理ポート単位で固定的に発生する費用(IX接続…②)に分かれます。全体の通信量やトレンドを予測し、TransitとIXをバランス良く使い分けることが重要です。
- Transitサービス
基本的には全ての通信がこのサービスを介してインターネットに接続します。Mbps単位で料金が設定されることが一般的です。 - IX接続
インターネットは無数のネットワークが相互に接続して成立していますが、それらを中継しているのがIX(Internet eXchange)です。IXに接続しているネットワーク間はTransitサービスを介さずに通信することが可能です。物理的にIXの装置を確保するため、その単位で料金が設定されることが一般的で、通信が多い(=装置を無駄なく使う)ほどコストメリットが出ます。ただし、IXと接続するにはグローバルASの割り当てを受ける必要がある他、ネットワークを適切に運用しなければ他の事業者に迷惑を掛けてしまうため、コストメリットを見るだけでなく、持続的に安定した運用が可能な体制を確立する必要があります。
サービス利用料 ~まとめ~
実際に必要な費用ですが、似たサービスを提供している企業がとても多く価格競争が激しいため一概には言えませんが、以下を目安に考えればそこまで大きく差が出ることは無いと思います。
- データセンタ設備使用料 数十万円/月~
- MNO/MVNEと接続するための専用線使用料 数十万円/月~
- MNO/MVNEの設備使用料 MNO各社が公開している「MVNOに関する情報」を参照
- Transitの設備使用料 Mbpsあたり数百円~数千円/月
- IXの設備使用料 数十万円/月~
中でもMNO/MVNEの設備使用料、特に通信帯域に応じて発生する月額費用がかなりの割合を占めます。ただこの費用は年々下がっており、2013年当時は10万円近い単価でしたが2024年現在は1万円強です。
スマホの利用傾向が変化しているため単純比較はできませんが仮に帯域を1Gbpsとした場合、1億円/月→1千万円/月近くまで下がっていることになります。
通信帯域に応じて発生する月額費用は今後も下がり続けることが予想されます。
こういった環境の変化もあり、自社設備を保有することの費用的なハードルは昔と比べて低くなっています。
次回記事ではMVNO事業に必要なものと販売形態についてご紹介します。