前回記事ではMVNO事業で利用する外部サービスについてご紹介しました。
本記事ではとくに大きな金額が必要となる機器購入ついてご紹介します。
“今さら聞けないMVNO”シリーズ記事一覧はコチラ
- MVNOに必要なモノ・コト
- MVNO事業で発生する費用①
- MVNO事業で発生する費用②
機器の販売形態
MVNO事業を行う上では様々な機器を準備する必要がありますが、機器の用途やメーカー、販売代理店によって販売形態が異なります。会計処理のルールによっては事業計画の立て方に影響する場合もあるので注意が必要です
販売形態は大きく分けて以下の2種類が考えられます。
ハードウェアやソフトウェアを一括で購入する形態です。通常は購入費と別に加入必須の保守サポート費が発生します。故障時の交換品手配や製品不具合発生時の問い合わせ対応が含まれ、1年/3年/5年といった単位で更新間隔が設けられています。保守サポートは構築完了後(=サービス開始後)からスタートするという勘違いが時々発生します。通常、機器の購入と同時に保守サポートも開始されるため、計画する際には注意が必要です。
ソフトウェアの機能毎にライセンス利用料を支払う形態です。基本的には年間サブスクリプションで、毎年費用が発生します。3年や5年間隔で期間が設定される場合もあります。
MVNOネットワークに必要なもの
MVNOではネットワークの仮想化が主流になっており、構築した仮想化基盤の上に必要な機能を乗せていきます。以前の記事(MVNOに必要なモノ・コト)で説明した、MVNOのネットワークで使う技術をベースに、必要なものと購入方法の例を紹介します。
- ネットワーク装置
ルータやスイッチングハブといった装置で、ネットワーク全体で必要な通信速度によって装置の構成が変わります。まずは1Gbpsか10Gbpsで構築し、必要に応じて拡張していきます。モバイルの場合、契約者1回線あたり30Kbps前後※で計算することが多いです。装置の設定情報やステータスを管理‧可視化するソフトウェアをメーカーが提供している場合があります。 - サーバ本体
モバイルコアなど必要な機能をインストールするための基盤となるサーバです。本体とは別にOSやハイパーバイザ、サーバ管理用のソフトウェアが必要です。
- P-GW
以前の記事(MVNOに必要なモノ・コト)で紹介したパケット交換機です。加入者数に応じてソフトウェア費用が変動することが一般的で、1万ユーザ、10万ユーザ、100万ユーザなどメーカーによって基準となる単位が異なります。
- CGN/DNS
以前の記事(MVNOに必要なモノ・コト)で紹介したインターネット接続に必要な機能です。処理する通信速度に応じてソフトウェア費用が変動することが一般的で、1Gbps、10Gbps、20Gbpsなどメーカーによって基準の単位が異なります。 - DPI
以前の記事(MVNOに必要なモノ・コト)では説明していませんが、加入者に対して通信帯域を公平に分配したりアプリケーション毎の通信品質を分析するためにDPIを用いることが多いです。一部のヘビーユーザーに帯域が占有されることを防いだり、サービスの品質低下をいち早く察知することが可能です。処理する通信速度に応じてソフトウェア費用が変動します。
※DPIについてはコチラから
- PCRF/OCS
- RADIUS
以前の記事(MVNOに必要なモノ・コト)で紹介したユーザ認証やリアルタイム課金に必要な機能です。加入者数に応じてソフトウェア費用が変動することが一般的で、1万ユーザ、10万ユーザ、100万ユーザなどメーカーによって基準となる単位が異なります。
- SNMP/SYSLOG
- 可視化ダッシュボード
以前の記事(MVNOに必要なモノ・コト)で紹介した安心‧安定したネットワーク運用に必要な機能です。オープンソースソフトウェアを使用する場合が多いため、ソフトウェア費用が発生しないこともありますが、有償のソフトウェアを使用する場合は管理対象の装置数に応じて費用が発生することが一般的です。10台、50台、100台などメーカーによって基準の単位が異なります。
機器購入には実際いくら必要なのか、については実現したいサービス内容や規模に依るため一概にはいえませんが、当社実績ですと以下が目安になります。
- 機器購入+加入必須の保守サポート+設置‧構築作業 3億円前後
- サービス開始後の年間費用 6千万円前後
購入した機器は減価償却の対象になると思いますので、年間1.2億円前後が費用の目安になります。
MVNO事業に必要な費用〜まとめ〜
前回記事、本記事を通してMVNO事業で発生する費用のなかでも大きな割合を占める機器購入とサービス利用について紹介しました。あまり触れませんでしたが、業務委託費(プロジェクト管理、システム開発‧運用、物流管理‧コールセンター等の定型業務など)や販管費(人件費、広告宣伝費など)も考慮が必要です。それぞれの費用は連動していることが多く、並行して検討する必要があるため専門知識が必要です。
当社は技術的なことだけでなく、事業化する際の企画‧運営のご支援も可能ですので、お気軽にご相談ください。